ISSUE004 / FIELD WORK - ISSUE

私たちにとっての家づくり、そのプロセス — K邸の場合

Published on 5.5.2017

機能を積み上げるパズルではなく、
ストーリーの共有からはじめたい。

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私たちが家づくりのプランニングをはじめる際、
最初から間取りの話をすることはありません。
まず、「あなたの理想の1日の過ごし方を教えてください」
と、お聞きすることにしています。

もちろん、すぐによどみなく理想のストーリーを語れる方は、多くはありません。
むしろ、「特別好きなもの、強いこだわりもないんです」と答える方のほうが、多いほど。
たとえばK邸の場合も、はじまりはそんな風でした。

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最初にお聞きしたのは、平屋建てを理想としていること、
そしてハーブガーデンを庭に据えたいという、二つのご希望だけ。
しかし、なにげない、雑談のような対話を重ねるうちに、
ご夫婦は、かつて私たちが手がけた「tutui」のカフェスペースに魅力を感じている、とい
うことを、私たちに話してくださいました。
そして奥様はここ数年、北欧の食器を集めはじめているとのこと。
その二つのエピソードが加わることで、デザインのトーンがより明確に描けるようになり
ました。

またご主人からは、庭しごとなどで衣服が汚れても良いように、
玄関からシャワールームへの導線をなるべく近くにしたい、そして
この廊下を掃除しやすくしたい、と、こちらはより具体的なご要望が。
じつはこれもまた、理想のライフスタイルを共有するための、大切なストーリーです。

 

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こうした思いを受けとったうえで、K邸のあるべき「かたち」、
フォルムとゾーニングの解を教えてくれたのは、土地のロケーションでした。
青々とした葉の茂るトウモロコシ畑と、その向こうに広がる中央アルプス。
この美しい風景を望む方角は南西でしたが、迷いなくこちらを家の正面、いちばんの開口
部に(方角を家づくりの可能性については、またの機会に)。
ウッドデッキを挟んだその先には、当初からのご要望であったハーブガーデンのスペース
をご用意しました。

玄関からのアプローチは、掃除のしやすさ、という観点から、
トラバーチンという石を模したタイルを選択。
これを、あえて汚れに気づきやすい明るい色にすることで、
リビングとの空間の変化をドラマチックに楽しめる効果も生まれました。

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クライアントの理想のかけら、瞬間瞬間の思いを、
時間という、流れあるものへとつなぎ合わせていく——。
じつはそのために、私たちはクライアントとの対話を重ねているのかもしれません。
そしてその時間を、空間というかたちあるものに定着させる行為こそが、
建築デザインであり、インテリア選びなのでしょう。

家族構成やその年齢に即し、必要な「機能」を積み上げ、間取りにはめていく。
そんな、一般的な家づくりのプロセスは一見、近道のように思えます。
しかし私たちは家づくりを、そこですごす時間の流れから、考えていきたい。
どんな場所で過ごす時間が多いのか、どのような環境に心地よさを感じるのかといった
スタイルや感覚の共感があってこそ、
必要な機能が見え、デザインが見え、そのあるべき場所が導き出されるはず。
そんな風に、私たちは考えています。